第2回研究会報告

日時:2013年2月9日(土)14:00〜18:00
場所:東京国際大学国際交流研究所 第1キャンパス金子泰蔵記念図書館4階L422教室


発表概要
1.「What perspective for a civil marriage in a confessional society, Lebanon?」(宗教集団支配社会のレバノンにおいて市民婚の成立にどのような展望が持てるのか?)
発表者:アイーダ・カナファーニー・ザハル(Dr. Aida Kanafani-Zahar) (フランス国立科学研究所研究員)

要旨:
レバノン出身で人類学者であるアイーダ博士は、現在はフランスの国立科学研究所(C.N.R.S)の研究員で、フランスを拠点として活動されています。 今回は上記のテーマで、レバノンにおける「civil marriage」(市民婚:宗教上の儀式によらず、公的機関の戸籍係に婚姻届けを提出して合法化される結婚)の可能性とその問題点についてご発表いただきました。

発表の概要は、以下のとおりです。

レバノンは宗教共同体が多元的に成立した歴史を持ち、今なお、複雑な背景のもとで政治的にも不安定である。18もの宗教集団が支配する複雑な宗教社会の特性をもつレバノンでは、「civil marriage」制度化の試みが行われてきたが、現実には成功していない。政治と宗教の相互関係において、複雑な問題をかかえているレバノンでは近代的な「civil marriage」の合法化には今なお、難しい問題が山積している。従って、レバノンでは、「civil marriage」は公的には存在していない。多くの宗教が共存するレバノンでは18の公認宗派が存在し、宗教上の権威に認められた結婚のみが実効性を持つことができる。1920年のフランスの委任統治による大レバノン共和国の成立以来、「civil marriage」の制度化と家族法の世俗化のための動きは、さまざまな政治家や法律家によってなされてきたが、その最後の試みである前大統領イリヤース・ハラーウィー(Elias Hrawi)による働きかけも失敗に終わり、現在も「civil marriage」は合法化されていない。特に宗教や宗派の異なる男女の結婚に関しては、宗教婚の成立が困難な場合に、その結婚を合法化するための「市民婚」が必要とされる。その場合に、男女はトルコやキプロスなどの近隣の国で婚姻届を提出することがあるが、レバノンではその結婚は合法であると認められない。一見、近代的に見えるレバノン社会は、極めて保守的な宗教集団支配の社会であり、市民はそれぞれの宗教的戒律に厳格に縛られているのが現実である。


2.「アルジェリアから見たアラブの民衆革命―-独立50周年目を迎えたアルジェリア訪問から」
発表者:宮治美江子 (東京国際大学名誉教授)

要旨:
発表内容につきましては、発表内容に加筆した以下のファイルをご覧ください。

・「アルジェリアから見たアラブの民衆革命―独立50周年目を迎えたアルジェリア訪問から」(PDFファイル、初出『IIET通信』46号、東京国際大学国際交流研究所、2013年3月、75-82頁。)

文責:
科学研究費補助金 基盤研究(A)「変革期のイスラーム社会における宗教の新たな課題と役割に関する調査・研究」(東京国際大学国際交流研究所)


<トップページへ>