2013年6月15日公開シンポジウム 概要紹介

科研A変革期のイスラーム・公開シンポジウム「宗教間対話の新しい局面へ」

日時:2013年6月15日(土)14:00〜18:00
場所:東京国際大学早稲田キャンパス(東京都新宿区西早稲田2-6-1)、マルティホール
参加:自由(無料)
プログラム
@「岐路に立って―ジャスミン革命後のチュニジアでの“穏健派”ムスリムの増加と民主化への挑戦」(“At the Crossroads: the Rise of “Moderate” Islamists and the Challenges of Democratic Transition in Post-January14th, Tunisia”)
【講師】ハージェル・ベンハッジサレム博士(Prof. Dr. Hajer Benhadjsalem)、チュニジア、チュニス・エル=マナール大学高等人文学院助教(The High Institute of Humanities of Tunis)

A「宗教間対話の諸問題―事実と虚構の分離」(“Issues facing interfaith dialogue: Separating fact from fiction”)
【講師】サミール・ヌーハ教授(Prof. Dr. Samir Abdel Hamid Nouh)、エジプト、比較言語学博士(パンジャーブ大学)、同志社大学客員教授

B「キリスト教とイスラーム間の宗教間対話――霊的道の役割――」(“Interfaith Dialogue between Christianity and Islam - the Role of Spiritual Paths -”)
【講師】リアナ・トルファシュ博士(Dr. Liana Trufas)、ルーマニア、文学博士(筑波大学)、前筑波大学教授、筑波大学非常勤講師

C「ヨーロッパの宗教間対話の40年―ヨーロッパ・ユダヤ教徒・キリスト教徒・ムスリム協議会」(“Forty Years of Interfaith Dialogue in Europe: The JCM Conference”)
【講師】ジョナサン・マゴネット教授(Prof.Dr. Jonathan Magonet)、イギリス、神学博士(ハイデルベルク大学)、レオ・ベック大学前学長・名誉教授、西南学院大学客員教授


資料:「第1回公開シンポジウム案内」(PDFファイル)



第1回公開シンポジウム・レポート

 2013年6月15日、東京国際大学早稲田キャンパス、マルティホールにおいて、ハージェル・ベンハッジサレム博士、サミール・ヌーハ教授、リアナ・トルファシュ博士、ジョナサン・マゴネット教授の4名の講師をお招きして、本科研主催による公開シンポジウム「宗教間対話の新しい局面へ」が開催された。 本シンポジウムの目的は、ユダヤ教・キリスト教・イスラームの専門家に、それぞれの事例から発表していただくことで、現実的には極めて難しい課題である宗教間対話への取り組みについて理解を深めるというものであった。

 ハージェル・ベンハッジサレム博士は、チュニジア出身の文化人類学者で、チュニジアのチュニス・エル=マナール大学高等人文学院に所属している。博士は、2009年5月から7月の間、国際交流基金による派遣で筑波大学北アフリカ研究センターで研修をうけ、日本の伝統と宗教について研究した。そのご縁もあり、今回3度目の来日の運びとなった。本シンポジウムでは、「岐路に立って―ジャスミン革命後のチュニジアでの“穏健派”ムスリムの増加と民主化への挑戦」というテーマで、チュニジアの民衆革命後の民主化について、社会と宗教の関係についての豊富な実例を交えて発表していただいた。

 サミール・ヌーハ教授は、エジプト出身の比較言語学者であり、現在は同志社大学客員教授を務めている。同志社大学神学部・神学研究科ホームページのプロフィール(外部リンク)によると「カイロ大学で教鞭を執り、1982年、東京のアラブ・イスラーム学院に移る。1986年にイマーム・ムハンマド・ビン・サウド大学(リヤド)に移り、2004年より同志社大学の任期付教員。同志社大学ではアラビア語とペルシア語を教えている。一神教学際研究センターの活動に深く関わっており、その機関誌であるJISMORのアラビア語版の編集をしている。日本におけるイスラームと宗教、武士道とイスラーム文明の価値などをテーマにした著作を著してきた。最近は、第二次世界大戦前の日本におけるイスラーム理解について研究をしている。」とのことである。 詳細については教授の公式ホームページ「**Samir's Homepage**」(外部リンク)も参照いただきたい。最新の活動として、2013年7月にスペインのマドリードで開催された「World Conference on Dialogue」では第1セッションで講演を行った。その際の動画が「Muslim World League」<外部リンク>の「該当ページ」<外部リンク>で視聴可能である。本シンポジウムでは「宗教間対話の諸問題―事実と虚構の分離」というテーマで、猪瀬都知事のオリンピック発言、ボストンでの爆弾事件、アルジェリアでのテロ事件など最新のイスラームに関する事例から見えてくるものと、宗教間対話の呼びかけが花開き、実りあるものとなるための前提と展望をお話いただいた。

 ルーマニア出身のリアナ・トルファシュ博士は、前筑波大学教授であり、本科研の研究協力者でもある。特に宗教的シンボリズム、神秘思想の専門家であり、現在は筑波大学、早稲田大学、東京外国語大学で非常勤講師を務めている。主著として、シンボルとは何かという問題についてキリスト教伝統思想による成果を膨大な文献から考察した『シンボル理論と伝統思想』(外部リンク、大河書房、2007年)がある。本シンポジウムでは、「キリスト教とイスラーム間の宗教間対話――霊的道の役割――」と題して、キリスト教とイスラーム神秘思想に関する膨大な文献より抽出された資料から、宗教間対話における有効なアプローチの一つのあり方を提言していただいた。 なお、英語も日本語も非常に堪能なトルファシュ博士は、配布のための英語原稿、日本語原稿双方を、すべてご自身の手で作成されている。

 ジョナサン・マゴネット教授は、ユダヤ教進歩派ラビであり、レオ・ベック大学前学長・名誉教授、西南学院大学客員教授を務めている。昨年度の本科研共催による公開講演会においては「現代におけるラビの役割と挑戦―進歩派ユダヤ教と宗教間対話」と題して講演を行っていただいた。詳細な経歴や当時の様子については該当する記事をご参照いただきたい。2012年に引き続いて本年も来日し、福岡の西南学院大学にて客員教授として滞在しており、2013年6月29日には東北学院大学ヨーロッパ文化総合研究所公開講演会「ユダヤ教の聖書解釈伝統とその今日的意義」(外部リンク)においても講師の一人として参加するなど精力的に日本で活動されている。 近著として、2013年1月に出版された日本の根付をテーマとした小説『Netsuke Nation: Tales from Another Japan』(外部リンク、Troubador Publishing)がある。2013年6月には、70歳の誕生日を記念して、弟子や同僚による教授の個人史や宗教間対話に関連する重要な論説が収録された記念論集『Welcome to the Cavalcade 』(外部リンク、Lulu)が出版されている。詳細や最新情報については公式ホームページ「Home - Jonathan Magonet」(外部リンク)を参照されたい。今回のシンポジウムでは、「ヨーロッパの宗教間対話の40年―ヨーロッパ・ユダヤ教徒・キリスト教徒・ムスリム協議会」というテーマで、自身が主催された団体である「ヨーロッパ・ユダヤ教徒・キリスト教徒・ムスリム協議会(JCM)」の成立とその背景について、活動における具体的な苦労や成果を中心にお話しいただいた。

 

 

 当日は、天気予報では曇りのち雨とのことだったが、実際は終日雨足が訪れることなく、60名を超える参加者にお越しいただけた。講演はすべて英語で行われ、来場者には英語原稿および日本語翻訳原稿が配布された。3時間近い4名の講師の講演ののちに、45分の質疑応答の時間が設けられた。前回の講演会に引き続き、岩崎真紀(筑波大学助教)研究分担者が通訳を担当し、議論と対話が行われ、質問が途切れないまま閉会の時間となった。

 講演内容については、当日会場で配布されたものの修正版の英語(原文)原稿・日本語(翻訳)原稿を準備いたしました。皆さまのご研究にご活用いただければ幸いです。

@ハージェル・ベンハッジサレム博士(Dr. Hajer Benhadjsalem) 英語(原文)講演原稿
At the Crossroads: the Rise of “Moderate” Islamists and the Challenges of Democratic Transition in Post-January14th, Tunisia
Aハージェル・ベンハッジサレム博士(Dr. Hajer Benhadjsalem) 日本語(翻訳)講演原稿
岐路に立って―ジャスミン革命後のチュニジアでの“穏健派”ムスリムの増加と民主化への挑戦
Bサミール・ヌーハ教授(Prof. Dr. Samir Abdel Hamid Nouh) 英語(原文)講演原稿
Issues facing interfaith dialogue: Separating fact from fiction
(PDFファイル)
Cサミール・ヌーハ教授(Prof. Dr. Samir Abdel Hamid Nouh) 日本語(翻訳)講演原稿
宗教間対話の諸問題―事実と虚構の分離
(PDFファイル)
Dリアナ・トルファシュ博士(Dr. Liana Trufas) 英語(原文)講演原稿
Interfaith Dialogue between Christianity and Islam - the Role of Spiritual Paths --
(PDFファイル)
Eリアナ・トルファシュ博士(Dr. Liana Trufas) 日本語(翻訳)講演原稿
キリスト教とイスラーム間の宗教間対話――霊的道の役割――
(PDFファイル)
Fジョナサン・マゴネット教授(Prof.Dr. Jonathan Magonet) 英語(原文)講演原稿
Forty Years of Interfaith Dialogue in Europe: The JCM Conference
(PDFファイル)
Gジョナサン・マゴネット教授(Prof.Dr. Jonathan Magonet) 日本語(翻訳)講演原稿
ヨーロッパの宗教間対話の40年―ヨーロッパ・ユダヤ教徒・キリスト教徒・ムスリム協議会
(PDFファイル)

翻訳文責:(A、C、Gのみ)
科学研究費補助金(基盤研究(A)「変革期のイスラーム社会における宗教の新たな課題と役割に関する調査・研究」(東京国際大学国際交流研究所)

*このページの情報は全て2013年7月現在のものです。
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